二つの殺人|宣告書《せんこくしょ》

   二つの殺人|宣告書《せんこくしょ》

「あッ」とカオルは愕きの声をあげた。「するともしや、父が殺人をして逃亡したとでも仰有《おっしゃ》るのですか」「まだそうは云いきっていません。――一体お父さんは、この家でどんな仕事をしていたか御存じですか」「わたくしもよくは存じません。ただ手紙のなかには...

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新しく現われた調べ手

 カオルは、新しく現われた調べ手に、やや顔を硬ばらせながら、「いいえ、物心ついて、今夜が初めてなんですのよ」「ふうむ。それは又どういうわけです」「父はあたくしの幼いときに、東京へ預けたのです。はじめは音信も不通でしたが、この二、三年来、手紙を呉れるようになり、そしてこんどはいよいよ会いたいから...

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署長は首をかしげ

「へえ、二十九日か」署長は首をかしげ「そらおかしい。ドクトルは三十日に、当分旅行をするという札を玄関にかけて、この邸を留守にしたんや。旅行の前日の手紙で、二、三日うちに大阪へ来いといって置いて、その翌日に旅行に出るちゅうのは、怪《け》ったいなことやないか。そんな手紙貰うたなどと、お前はさっきから嘘を...

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