手習ひの折の小言

[#7字下げ]九[#「九」は中見出し]

「誰れぢや。……奈良枝か。」 暗黒の室の欄間のあたりから、手習ひの折の小言で、耳の底深く滲み込んでゐる和尚さんの聲が、いやにそは/\した調子で聞えた。 これや、しまうたわい、と思つて、文吾は暗黒の室内を、瞳が二つあると言はれる眼で透かして見た。自分が今五...

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家にあるお米や麥

「戰《いくさ》があつたら、もうお前ぐらゐの年のものは、軍役《ぐんえき》というて、兵粮運びなんぞに使はれるし、家にあるお米や麥は皆取り上げられ、家の納屋《なや》も燒かれる。」と、和尚さんは教へた。「兵粮運びしたら、駄賃呉れはりまツか。」と、其の手習ひ子は、嬉しさうな顏をした。「駄賃は呉れんな、駄賃...

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駿河屋の羊羮

[#7字下げ]八[#「八」は中見出し]

 光明寺の和尚さんは、伏見から取り寄せた駿河屋の羊羮で、宇治の玉露を淹《い》れて飮むのを樂んでゐた。紅を刷いたやうな四角い長いものを、和尚さんが大事さうに庖丁で切つて、齒のない口でもぐ/\やつてゐる度に、手習ひ子等は何を喰べてゐるのかと思つて、遠くから不思議...

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